クールなオオカミの過剰な溺愛
気まずい沈黙が流れながらも、10分ほどで掃除が終わった。
一刻も早くこの場から去りたかった私は急いで箒を掃除用具入れへと直す。
「じゃ、じゃあ今日はお疲れ様!」
先ほどまでの私ならきっと半ギレ状態で挨拶して帰っていたかもしれないけれど。
今は違う。
焦りのほうが強かったのかもしれない。
「……夏原さん」
「…っ」
「まだ帰らないでってわがまま、聞いてくれる?」
その聞き方はずるいのではないか。
まるで見捨てないでとでも言われているようだ。
「どうして?」
「今はひとりになりたくないから」
せっかく鞄を持って帰る準備は万端だったというのに。
水瀬くんに話しかけられたことにより、すべて無意味になってしまった。