太陽と月

私達は手を繋いで帰った。


陽介は少しだけ足を引きずっていたけど、いつもの様に時々おちゃらけた話をしてくれた。


家に着くと、


「椿さん、陽介さんお帰り…どうしたんですか!?その怪我!?」出迎えてくれたのは丁度帰るところだった、川口さんだった。


「いやー転けた!」そうへへっと笑う陽介。


「転けたって…マリ子さん!」そう不審そうに思いながらもマリ子さんを呼びに戻る。


私と陽介は玄関の上がりかまちに座り、ほっと息をついた。


「陽介さん!大丈夫ですか!?」救急箱を片手に血相を変えたマリ子さんが飛んでくる。


「あっマリ子さん!ごめんなさい、服めっちゃ汚しちゃった」と謝る陽介。


「そんなのは洗ったら済む話です!」そう言って濡れたタオルで陽介の顔を拭く。


「椿さんは怪我はありませんか?」と川口さんに聞かれた。


「私は大丈夫…。」
だって見ていただけだから。


「それはよかった」とニコリと笑ってくれたけど、罪悪感で一杯になった。


「お顔は冷やしましょうね。氷取って来ます!」マリ子さんはバタバタとまた奥に戻って行った。


「陽介さん、転けたにしては上手いこと急所は全て外れていますね」と笑みを浮かべる川口さん。


どういう事だろ?


「…いや!ほら!えーと…」としどろもどろになる陽介。


「私が教えた防御術がお役に立ったみたいで良かった」そう微笑んだ。


「どういう事…?」私が呟くと


「あーまぁあいつら、がむしゃらに殴ったり蹴ってきてるだけだから、急所に当たらない様に避けていたんだ」とニカッと陽介が笑った。
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