太陽と月
その顔には、悲しさと疑いが混じった様な表情だった。


私は、颯介の言葉を思い出す。


“逆襲をしよう” “2人だけの秘密だよ”


全ての意味が分かった。


颯介は私の為に、紙を擦り替えたんだ。


私は胸が熱くなるのが分かった。


颯介・・・貴方はいつも不器用なやり方で私を大切に大切にしてくれたよね。


私はそれを信じて疑っていなかったよ。


でも、そんな中で貴方が苦しんでいた事には気付かなかった・・・。








「そうなんだ・・・。でも紙には・・・・・




造花って書かれていたよ」私はまた嘘をついた。


だって、あの事は私と颯介2人だけの秘密だから・・・。



「そっか!でも木下をあんあ風に晒し者にしたのは・・・何で?」


陽介はじっと私を見据えてくる。これ以上の”嘘”は許さないって言っているように見えた。



「ごめん。それは私にも分からない」


私はどうしようのないくらい、汚い人間だ。いつも私と真っ直ぐに向き合ってくれている陽介にいとも簡単に何個でも嘘をついている。



でも私が守りたいのは、”2人だけの秘密”それだけだった。


陽介はそれ以上、何も聞いてこなかった。


その後は、いつもの陽介に戻り他愛のない話をするだけだった。


私も陽介を大切に思っている。陽介の為なら、自分が不幸になってもいい


心からそう思っている。


でも私の心を、思考を大きく動かしてくれるのは、他でもない颯介だけだった。



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