大人の女に手を出さないで下さい
その時、彼女のバッグが棚にぶつかった。
アッ!と思った時には飾ってたお皿がグラグラと揺れ、手を出す間もなく落ちてしまった。
ガシャンと割れた音が鳴り響き振り向いた彼女はさすがに悪いと思ったのか青い顔で立ちすくむ。
梨香子が割れてしまったことを残念に思いながらしゃがみこみ破片を拾う。

「すいません…弁償します」

財布を取り出しそう言った彼女を見上げ梨香子は首を振った。

「いいえ、お店で割れたものはお客様に弁償してもらう必要ありません」

「でも!……払います、おいくらですか?」

さすがに客のつもりで来たわけじゃないので梨香子に借りを作るのも嫌だと、商品があった棚を見た彼女は、取り残されてたプライスカードの金額を見て顔色を変えた。

「こんな、薄汚いお皿が3万円!?おかしくないですか!?」

「これは、確かに新品みたいにピカピカではないけれど、貴重なアンティークなのよ。昔の職人が丹精込めて手作りしたお皿なのよ」

機械で大量生産の今の時代では考えられない全て手作りのお皿は貴重だと思うのだけど彼女には考えられないようだ。

「でもこんな金額ボッタクリだわ」

「120年もの間大事に使われて今でも残っていることに価値があるのよ、3万円は妥当な金額だと思うけど」

グッと押し黙った彼女は財布を漁り3万円を出すと立ち上がった梨香子に押し付けた。

「とにかく、これで弁償します」

「待って」

踵を返そうとした彼女の腕を取って梨香子はお札を彼女の手に戻した。

「弁償はいらないわ。これはお店としてのポリシーだから。どうしても気が済まないというのなら同じだけの金額で他の物を買ってくれればいいわ」

気に入った物があるんでしょ?と言うと彼女は驚いた顔をして慌ててそのまま帰って行った。

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