大人の女に手を出さないで下さい
奥野も蒼士が来たのを見て鋭い視線が梨香子の肩に注がれてるのに気付いて手を上げた。

「おっと、失礼」

「あ、えっ…」

奥野から開放されたと思ったら今度は蒼士に抱き寄せられ目を白黒させる。
蒼士はぎゅっと腕に力を込め奥野を睨んだ。

「なんであなたが…」

「ナンパされて困ってるところを助けただけだよ」

「え?ナンパ!?」

さっきの青年達は梨香子をナンパしてたのか?
そんな雰囲気全然無かった気がしたが梨香子は話せないのでなんとも言えず口を噤む。
蒼士の手に力がこもり唸るように言った。

「でもワイフと言う必要ありますか?」

「ふ…話が手っ取り早いと思って言ったまでだよ。そんなに怒るくらいなら大事な人を一人にしないことだな。君は両手に花だったようだが」

「そんなんじゃ…」

奥野は後ろで何事かと見ている二人の女性を一瞥し、蒼士の言い訳も聞かずふんと鼻で笑い去って行った。

「蒼士くん…」

梨香子が見上げると険しい表情のままの蒼士と目が合い気まずい雰囲気に後ろにいた二人も固唾を呑んでいた。

「ごーめんなさいねえ!ちょーっとお腹が痛くってえ〜」

重い空気もなんのその、呑気に笑ってトイレから出てきた深田夫人。
皆意表を突かれ深田夫人を注目した。

「あら?どうしたの?」

「あ…お腹大丈夫ですか?」

梨香子が気を使って蒼士からから離れ深田夫人を労る。

「ぜーんぜん大丈夫よ!便秘が治ってかえって良かったわあ」

ハハッと笑う夫人につられて梨香子も脱力したように笑った。
< 222 / 278 >

この作品をシェア

pagetop