大人の女に手を出さないで下さい
「だ、大丈夫?」

恐る恐る声をかけるとゆっくり起き上がった蒼士はガックリと頭をもたげた。
これはちょっとやりすぎたかしら…。
いくら蒼士を落ち着かせるためとはいえ、意図したわけじゃないけど男にとって大事な股間を攻撃するのはまずかっただろうかと梨香子は青冷める。

「……はあ~……」

蒼士はいつの間にか股間ではなく頭を押さえ大きなため息を吐いた。
と、思ったらいきなりガシガシと自分の頭をかき乱しまた一つため息を吐く。
声をかけようかどうしたものか梨香子が考えあぐねてるとすくっと立ち上がった蒼士にぎょっとする。

「ごめん…ちょっと、頭を冷やしてくる」

「…あ…と…蒼士くん?」

蒼士は振り返りもせず部屋を出ていった。

‥………

「怒っちゃったかしら…」

アワアワと焦ったものの梨香子はちょっとホッとした。
目の色を変えた蒼士は少し怖かった。
蒼士の想いを受け止めるには梨香子の気持ちが付いていかない。
想いの大きさが蒼士と自分とでは違うのだろうか?
そのズレが大きくなっていつかすれ違うようになるのではと梨香子は思ってしまった。

「こんなに愛してくれてるのに、私は贅沢過ぎる…」

自分がもっと蒼士を受け止められるようにならないとと梨香子は想う。
同じ気持ちで、同じ温度で、蒼士とは愛し合いたい。これからもずっと。


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