大人の女に手を出さないで下さい

「なるほど、君はかなりのヤキモチ焼きと見た。彼女を独り占めしたくて仕方がないんだな」

言い当てられて蒼士はムッとするが言い返しはせずにじっと奥野を睨む。
それに辟易して奥野は笑いながら言った。

「勘違いしないでくれよ?国永さんは人間として好感は持ってるが、俺は君の婚約者をどうにかしたいなんてこれっぽっちも思ってないよ。これでも妻子持ちでね。今回は妻は身重で連れて来れなかったがそうじゃなかったら連れて来たかったよ」

妻子持ちだったんだ…。
意外な事実に蒼士はポカンと口を開けたがすぐに引き締まった。
元倉のように妻子持ちのくせに遊んでやろうといった輩もいるから侮れない。

「信じてくれてないようだね」

再び睨まれ奥野は苦笑いを零した。

「君はいい男なのに随分と自信が無いんだね?」

「自信?」

「そう、彼女に愛されてるという自信。自信があればそれほど焦ることもないだろう。周りを気にする必要もない。それとも彼女を信用してないのかな?」

「そんなことは…」

「なら、彼女を信じて、自分に自信を持てば自ずと余裕が生まれるんじゃないか?」

奥野を見遣ると悟ったような優しげな表情で男の余裕を感じさせた。
これが大人の男かと、自分はまだまだだと実感する。
親父にしろ速水にしろ、こうも周りに良い大人の男がいると憧れると同時に自分の幼さが露見して格好悪いと思う。
俺、もうすぐ33なんだけどな、とついため息をこぼした。


< 253 / 278 >

この作品をシェア

pagetop