大人の女に手を出さないで下さい
「梨香子は一回バージンロードを歩いてるからな。初婚の君に譲ったわけだ」

横から口を挟んできた男に蒼士は思わず剣呑な目を向けた。
色々疑問があるが、目の前に立ってるこの男がなぜここに居るのが一番の疑問だ。

「速水さん、なぜそこにいるんです?そこは神父の場所では?」

「それはもちろん、君たちを祝福するためだ」

にやりと笑うその顔に蒼士は胡散臭さがぬぐえない。
速水はそんなことはお構いなしに教会内に声を響かせた。

「これより、三雲蒼士くんと国永梨香子さんの結婚式を執り行う」

どうやら速水は神父役をするらしい。
梨香子の元夫が神父役など、複雑な気分だ。
シン…と静まりかえり厳かな雰囲気に蒼士も梨香子も前を向いた。

「三雲蒼士、汝は国永梨香子を妻とし、
 病める時も健やかなるときも富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、死が二人を分かつまで慈しむ事を誓いますか?」

「はい、誓います」

つい、強い眼差しを速水に向け、蒼士は力強く答えた。
満足げに頷いた速水は梨香子に向けて誓いの言葉を口にする。

「国永梨香子、汝は三雲蒼士を夫とし、
 病める時も健やかなるときも 富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、死が二人を分かつまで慈しむ事を誓いますか?」

「…はい、誓います」

梨香子は伏し目がちに震える声で、でもしっかりと答えた。
その声に蒼士は胸に迫る思いで梨香子を見つめた。

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