大人の女に手を出さないで下さい
指輪も用意されてて、いつの間に、と思いながらお互いの薬指に通す。
誓いのキスをしようと梨香子の肩に手を掛けると梨香子がこっそり言ってきた。

「蒼士くん、恥ずかしいからキスはほっぺにして」

「え~…」

唇にするのがセオリーだろうと、抗議の視線を送ったが梨香子がもじもじして恥ずかしそうにしてるものだから蒼士は折れて頬にキスをした。
それだけが不満だが滞りなく式は進み最後に、と速水は何やら取り出した。

「では二人、ここに署名を」

手前にある台に出されたのは婚姻届。
証人欄には既に父敏明と梨香子の父の署名が書かれていた。
ここで書くのかと、ギョッとする。
さあ、と速水にペンを差し出され、失敗は出来ない緊張とみんなに見られてる緊張で手が震えそうだった。
何とか書き終え梨香子にペンを渡すと「う…間違えそう」と呟いていて自分と同じだと思うと笑みが零れた。
梨香子が書き終え、ふうっと一つ息を吐く。

完成した婚姻届を掲げ速水は皆に向けて宣言した。

「これで晴れて二人は夫婦となりました。どうか皆さん二人の門出に温かい拍手を」

おめでとう!と言う言葉と拍手に歓声が沸き蒼士も梨香子も笑顔で応えた。
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