大人の女に手を出さないで下さい
その後は外に出てフラワーシャワーがあると言うので先に招待客が外に出て行く。
残ったのは蒼士と梨香子と速水だけ。
速水は婚姻届をファイルに挟み鞄に仕舞った。
それを見ていた蒼士と目が合いにやりと笑う。

「安心しろ、これは弁護士として責任を持って役所に届ける。捨てる様なことはしないさ」

「…頼みますよ?」

どうだか、と、思いつつ弁護士としての責任感を信じて婚姻届を速水に託すことにする。
速水は蒼士に対峙すると真剣な面持ちになった。

「蒼士くん、俺には出来なかったが、梨香子を幸せにしてやってくれ」

「勿論、言われなくても幸せにしますよ」

好戦的に速水を見据え蒼士は答えた。
それに満足そうに頷くと速水は梨香子に目を向ける。
お互い微笑み合っただけで言葉を交わさず、速水は先に出て行った。

視線だけで言葉を交わした二人に蒼士は少し面白くない。
外に向かうため梨香子の手を取り歩きながら蒼士は拗ねた顔をする。

「どうしたの?蒼士くん」

「なんだか悔しいな…」

「え?」

ぽつりと呟いた言葉は梨香子には聞こえなかった。

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