大人の女に手を出さないで下さい


「職場見学は楽しめなかった?」

「ううん、そうじゃなくて。あたしのこと、すごい噂になっちゃうんじゃない?大丈夫?蒼士くん」

「ん?大丈夫だよ。みんなそれほど気にしてないと思うけど」

「蒼士くんって、実は鈍感?」

「え…そんなことないと思うけど」

絶対あることない事噂されると英梨紗は思うのに蒼士はキョトンとした顔で考えもしないようだ。
ちょっと呆れていると、「それより、ここからの眺めがいいよ外を見てごらん」と言われて英梨紗は窓に近付き外を見た。
下はミニチュアのように小さくて遠くには山々が見える。
天気が良くて夕焼けが始まった空は青からオレンジ色に移り変わっている。いつもより少しだけ空に近いせいかとてもきれいに見える。
すごーい!きれい!と暫く景色に感動して見ていると、コンコンとノックが聞こえ秘書らしき女性が入ってきた。
すっきりとした美人さんで一瞬英梨紗を見て驚いていたが、蒼士が英梨紗が外を見ている間に頼んでいたようで綺麗な所作で応接テーブルにアイスティーとお茶請けのお菓子を置いて出て行った。
蒼士は少し仕事をして後で家まで送ってくれるというので待ってることにした。
英梨紗はソファーに座りアイスティーを飲み、真剣な表情で仕事をしている蒼士を眺めた。

「蒼士くんって、なんでママが好きなの?」

「え?なんでって…うーん、一目惚れかな?」

思わず聞いてしまった英梨紗に蒼士は仕事の手を休めちゃんと答えてくれた。
恥ずかしいなと照れているのが英梨紗にも伝染してちょっとくすぐったい気持ちになる。
でも今日見た会社にはたくさん綺麗な女性が働いていた。
蒼士は目移りしないのだろうか?


< 54 / 278 >

この作品をシェア

pagetop