大人の女に手を出さないで下さい
あれから、蒼士が梨香子に会いに行けたのは3日後のことだった。
実に2週間ぶり!
一度デートに誘ったものの断られ、へこたれそうになるも負けてたまるか!と、いつもより早く帰れる今日、店まで会いに行くことにした。
店が閉まるまであと1時間、その後デートに誘うつもりだ。
梨香子は案外直に会うと用事が無い限りデートを断らない。
折角来てもらってるし、と気を使ってくれてるようだ。
そこにつけ込むのは申し訳ないとも思うけど、こうやって会えずに限界を感じた時に行使している。
梨香子を想う気持ちは募るばかりなのに当の彼女は未だにつれないのが切ないところだ。
速る気持ちを抑えながら車を運転していると赤信号で止まった時に見覚えのある顔が横断歩道を通って目を見張った。

「速水さん…?」

三日前に初めて会ったばかりの速水弁護士はスーツ姿で女性と腕を組み微笑んでる顔がちらりと見えた。
相手の女性は顔は見えなかったがカールさせた肩までの髪がふわりとなびき清楚なワンピースとヒール姿で後ろ姿だけ見ればお似合いのカップルだった。
そう言えば速水の左手薬指に指輪をしていたからあれは奥さんだろうか?
仲よさそうな二人の姿を追っているうちに信号は青に変わり慌てて車を走らせた。

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