人生の続きを聖女として始めます
曲がりくねる長い廊下を抜けると、やがて、こじんまりとした平屋の建物が見えた。
南館と比べると、天と地の差がある北館は館というよりも少し豪華な小屋というのが相応しい。

「ここ!?こんなところにビクトリアが!?」

「はい」

「でも……腐っても妃なのに?」

腐ってもは余計かなと思ったけど、エスコルピオはさも当然のように言ってのけた。

「ジュリ様は知らないでしょうが、あの女はそれだけの罪を犯したのです。牢に繋がれていないだけでもありがたいと思わなければ!」

「一体何の罪?何をしたの?」

これは、父親が指名手配犯だからというだけでは無さそう。

「私がそれを話すことは出来ません。出来るのは獅子王陛下だけ。しかし、ジュリ様になら陛下も話して下さるでしょう」

「そう?獅子王が?」

とてもそうは思えない……とエスコルピオを睨むように見た。

「ふふ。信じられないようですが、ジュリ様は確かに、あの方の心を変えつつある。溶けない氷を溶かしつつあるのです」

エスコルピオは振り返りつつ頷いた。
自信たっぷりな彼とは正反対に、私は意味がわからず首を傾げていた。
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