人生の続きを聖女として始めます

ガブリエラ達と軽い昼食を済ませた後、オレは南館のレーヴェの部屋を訪ねた。
部屋の前で一度深呼吸をし、どう言って話を切り出そうかと考える。

「王宮で噂になっている件だが、嘘だ」

または、

「厨房の女中の噂はデタラメだ。オレはビクトリアとそういう関係ではない！」

か？
どうも上手く説明出来る気がしないな、と扉の前で考え込んでいると、後ろからゴツい腕が伸びてきた。
なんとその腕は、部屋の扉を破壊しそうな勢いで叩き始めたのだ。

「おーい、ジュリさまー？いるかー？」

「おいっ！何してくれてるんだ？」

ロシュだった……。
急いで止めたが、それは全くの無駄だった。

「だって陛下、全然行く気配がないからさ。ビビってんだと思って助けたんだよ」

助けてない。
ありがた迷惑だ。
とは言え、あのままでは踏ん切りがつかなかったかもしれない。
そう思うと、ロシュのバカも役に立ったのか。
呆れたようにため息をつき、軽くロシュを睨み、部屋からの返答を待つ。

だが、部屋からは何の応答もない。

気が短いロシュはレーヴェの部屋の扉を開け、ズカズカと踏み込むと、肩を竦めながら出てきた。

「誰もいない」

「そうか……ジュリの部屋は隣だな？」

「開けてみるか？」

「一応ノックをしろ………おいっ！」

開けてみるか？という言葉の途中で、ロシュは思い切りジュリの部屋を開けた。
聞いた意味がない……。
勝手に開けるなら聞く必要ないだろ？
最早呆れて言葉も出ないオレは、仕方なくジュリの部屋を覗いた。

「…………こちらもいないな……」

「うん。となると、弓の練習場か、または神殿部か？どっちに行く？」

お前、ついてくる気か？とはもう言わないでおく。
どうせ何を言ってもついてくるんだろう。

「練習場に行く道に神殿部があるだろ？順番に行こう」

ジュリやレーヴェの行動は制限されている。
特にレーヴェは南館と神殿部から出られないからわかりやすい。