人生の続きを聖女として始めます
「ど、どういうこと?」

リブラとヴィス、2人を交互に見ながら私は言った。

「その件を少しでも口にすると厳罰が下ります!それはジュリ様とて同じ。どうか、城の中で、特に陛下の前でその話はお止めください!」

「何で?ごめん、納得いかない。どうなったかを聞きたいだけ。それがダメなの?」

私の疑問にリブラは困った顔をしながら、ヴィスに目で合図を送った。
何の合図かはわからなかったけど、ヴィスは一つ頷いて扉の外へと消えた。

「見張りを立てました。それでも、完全とは言いがたいですが。あまり詳しくはお話出来ませんよ?」

「見張りって……そんなに危ないの?わかった。大丈夫よ。結果だけ知りたいから……」

私とリブラは他人としてギリギリ許せる範囲まで近付き、出来るだけ声をおとして会話した。
ここまでしてるのに、リブラはまだ不安げに扉を気にしている。
その様子は、まるで目に見えない何かに怯えるようだなと思った。

「簡潔に申しますと、ラ・ロイエはもうありません。陛下によって取り壊されました。そして、その領地の子爵と一人娘の令嬢は亡くなったそうです」

「そう………他には?」

「他とは?」

「……その令嬢の子供の話、聞いてない?」

リブラは考え込んだ。
そして、ゆっくりと首を振る。

「いえ、聞いておりません。子爵家はラ・ロイエから脱獄した者達に強襲されたという噂ですが……子供の話など一つも……」

あの夜の黒ずくめの男達が脱獄した囚人達?
絶対違う……。
監獄にいた人達は大体顔見知りだし、いくら顔を覆って隠してもすぐにわかる。
毎日配膳をしていた私が気づかないわけがない。
それに、彼らがそんなことをする人達じゃないってことを私は良く知っている。
でも、わからない。
どうしてレーヴェのことは、話にも出てこないのか?
最悪の事態は考えたくない。
だけど、ひょっとしたら……と思う自分もいる。
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