私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
☆舞side☆
エイトって、上から目線で
ひどいことばっかり言うくせに
たまに私の心を
ドキドキさせることを言ってくる
水着姿の私を見て
「スゲー可愛いと……俺は思うけど……」
って言ってくれたり
「その水着を着ていいのは
俺の前だけだからな」
なんて言ってきたり
エイト……
このまま一緒にいたら
きっと私の好きは止められなくなっちゃうよ
そうさせたのは……
エイトだからね……
エイトには伝えられない思いを
心の中でつぶやいた
「舞、海にはいろうぜ」
「私、泳げないんだけど」
「大丈夫!大丈夫!
この海、肩くらいまでの深さだから
それに
何かあったら俺がたすけてやるよ」
エイトの無邪気な笑顔に引き寄せられるように
私は苦手な海の中に入っていった
波がなく、静かな海
「これ使えよ」
「浮き輪だ!」
「ぷかぷか浮いてるだけなら、怖くないだろ」
私は浮き輪から顔を出し
海底からそっと足を放してみた
まるで宙に浮いているようで
このユラユラに癒される
「水に浮くって、こんなに気持ちがいいんだね
エイトが教えてくれなかったら
ずっと知らないままだったよ」
エイトを見つめて微笑むと
焦った顔で急に視線をそらしたエイト
顔が赤くなったような……
気のせいかな……
エイトは浮き輪を使わずに
空を眺めるように
仰向けになって浮いている
「この海さ
俺にとってすっげー思い入れのあるところでさ」
エイトが急に落ち着いた声で話し始めた
「俺が4歳まではさ
よく連れてきてもらってたんだ
親父と母さんに
その頃のことは
あんまり覚えてないんだけど
でも5歳になって急に
ここには連れてきてもらえなくなった」
「何かあったの?」
「親父が、俺に厳しくなったんだ
お前は魔法界の国王になる男だ
!甘えるな!ってね
それからは、親父にもお母さんにも
甘えようとすると叱られたよ
それからは親父の言いなり
魔法学校では1番以外許されない
家に帰れば、習い事や勉強づけの毎日
『魔法界の王にふさわしい男になれ』って
何度言われたかな
俺さ、親父にもっと
甘えたり認められたいんだと思う
それってさ、
男としても、王子としても情けないよな」
いつも自信満々で
弱みなんて見せないエイトが
心の奥に
こんな思いを隠していたなんて
私が癒してあげたい
エイトの心を
少しでも楽にしてあげたい
でも、何もできない無力の自分が
情けなくて嫌になっちゃう
私は浮き輪に入ったまま
エイトに近づき
頭をそっとなでた
エイトが切なそうな瞳で
私を見つめる
なぜか
エイトの瞳から逃れることができない
エイトはゆっくり起き上がると
私の頬に優しく手のひらをあて
引き寄せるようにキスをした
「ごめん……
今だけだから
舞のこと、抱きしめてもいい?」
私はこばむことなんてできない
だって私、エイトのことが大好きだから
私がコクリとうなずくと
浮き輪を外し
後ろから私を抱きしめた
エイトの腕がほどかれた時には
浮き輪はどこかに流されていた