私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
「あんたさ
エイト王子と釣り合うとでも思ってたわけ?」
横から、ドスのきいた太い声
声のする方を見ると
そこには全身黒ずくめで
顔に黒いマスクをつけた男が立っていた
目と口以外は全て隠れている
「だれ……ですか……」
「ここだと目立っちゃうからさ
場所を変えよっか」
男が指をパチンと鳴らしただけで
私も一緒に瞬間移動させられ
崖の先端に立たされていた
「ここって……」
「この崖の下ね、300メートルくらい落ちれば
海にドボンできるよ」
ゴツゴツした岩肌の上は
少しバランスを崩しただけで
海に落ちてしまいそうだ
逃げたくても、なぜか体が全く動かない
まるで、金縛りにあっているような感覚
「そうだな……
エイト王子に恋をしていたのに
許嫁がいることを知ってショックで
崖から身を投げたって筋書きはどう?
ロマンチックな最後にしてあげる」
「どうしてこんなことをするんですか?」
「どうしてって?
ま、俺にも守りたい相手がいるからな
魔法界なんかに来なければ
こんなところで死ななかったのにね」
男の左の口角だけが
ニヤリと上がったと同時に
体が宙を舞い
頭が海を向く逆立ちの宙づり状態
「やめてください
いますぐ、下ろしてください」
「ごめんね
俺さ、そんな優しい奴じゃないんだよね
恨むなら、エイト王子を恨んでよ
じゃあ、バイバイ」
その声とともに
私の体はミサイルのように
300メートル下の海に向かって
真っ逆さまに落ちはじめた
なんで……
私がこんな目に合うの?
あ……
これはきっと私への罰だ
クララをこの世から消してしまった自分が
追わなければいけない罰なんだ
エイトだって
私がこの世から消えても
きっとなんとも思わない
だってあんなにかわいいカノンさんが
エイトの隣にいるんだもんね
そう思ったら
真っ逆さまに海に落ちていく恐怖がなくなった
私はこの世から消える覚悟ができた時
急にペンダントが突然光り出し
紫のオーラがシャボン玉のように私を包むと
海へ優しく浮かんだ
「エイトが…
助けてくれたの?
わたしなんて
助かる価値のない人間なのに…」
紫のオーラに包まれたまま
海にユラユラ揺られ
私は涙を浮かべながら
いつのまにか眠りについた