私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)


「まい……

 舞!起きろって!!」



「んん」



舞がゆっくりと目をあけ
この状況を確認するように周りを見回した



「エイト……?

 そう……だった……

 私……助かったんだった……」



「ごめん、俺のせいで

 舞、本当ごめん」



「なんで
 エイトが謝るの?」



「お前、誰かに何かされただろ

 お前を守るって言っておきながら

 俺が今日、お前に会いに行っていれば
 こんなことにはならなかったのに……」



「そんなことないよ
 守ってくれたでしょ

 ペンダントが光って
 私を包み込んでくれた瞬間
 エイトだ!って思ったよ」



「でも…」



「それに
 あのまま海に落ちてもいいかなって思ったし」



「え?」



海に落ちても良かったって?

どういうことだよ!それ!



「エイトも寝転がったら、満天の星空だよ」



俺は舞に促された通り
舞の横に寝転がった



やべ!!

舞との距離が近すぎる!!



いくら
俺と舞の間に人が一人寝転がれるくらいの
スペースがあると言っても
少し腕を動かすだけで舞に触れてしまう



俺の顔を見られたら
舞への恋心が見透かされそうだ



「私ね、彼氏がいたことってないんだ

 恋をしちゃダメって
 さんざん親に言われ続けてきたからね」



舞が空に瞬く星を眺めながら
ゆっくり話はじめた



魔法界の人が、人間界の人を好きになると、
次の誕生日に
永遠の愛を誓わなければいけないのが掟だ



そうしないとクララみたいに
この世から消えてしまう



そうだよな
人間界にいるんだから
舞は恋なんてできないよな



「わが家って
 代々人間界で魔法界の人のための
 寮をしてるでしょ

 それを継がなきゃいけないの。私が

 高校を卒業したら
 魔法界にある寮の専門学校に
 2年間通わなきゃいけないの

 その時に、結婚相手を探せって言うのよ
 人間界で寮をしてくれる人をね

 だから高校卒業までは恋をしちゃダメなんだ」



舞にもそんな恋の縛りがあったのか



「クララと出会って
 一緒の部屋で暮らしたり
 学校に行ったりしてたときね
 クララがうらやましくてしかたなかったの

 歩君が大好きで
 まっすぐな思いで恋をしていて

 だから、嫉妬してた

 二人の恋なんて、うまくいかなきゃいいって

 歩君がクララ以外の子を好きになりはじめた時も
 クララを励ましながら
 本当はダメになっちゃえって
 思ったこともあったの

 ひどい女でしょ

 そしたら本当に
 二人が別れちゃったんだ

 永遠を誓う日まで、1か月しかないって時に

 私ね、その時初めて
 クララが私にとってかけがえのない
 大切な存在だって気づいた

 いなくなって欲しくない!
 ずっと私の親友でいて欲しい!って

 でももう遅かったんだ
 クララは歩君と永遠の愛を誓えなくて
 消えちゃったんだから」



「だからさっき、
 海に落ちてもいいって思ったのか?」



「そう
 クララがいなくなったのは
 私のせいだから

 歩君とずっと一緒にいられるように
 私がしてあげられることはたくさんあったのに

 恋ができるクララに嫉妬して
 見捨てたようなもんだから
 
 毎日結構辛いんだ……

 風鈴の音を聞くと
 クララが消えたあの日を思い出しちゃうし

 私がこの世から消えれば
 この罪からも逃れられるでしょ」



「でも毎日
 クララが戻るように魔法界に来てたじゃん!

 誰かのためにそこまでできるって
 俺はすごいと思うけどな」



「クララのためじゃないよ
 自分のために魔法界に来てたの
 
 クララが戻ってくれれば、謝ることができる
 クララが大好きって伝えることもできる

 そうすれば
 クララが消えたことへの罪が
 軽くなると思うから

 私はそういう女だよ」



それでも俺は
舞は偉いと思う

思い出すだけで心が切り刻まれるような過去から
逃げずに魔法界に毎日来ていたんだから



「舞のしたことなんか罪のうちに入んねえぞ

 そんなこと言ったら俺なんか
 おもりをつけて海に飛び込まなきゃ
 いけないようなひどいことを
 色んな奴に言ってきたからな

 ま、飛び込んだとしても
 俺なら魔法でおもりを外しちゃうけどな」



舞の苦しみを全て取り除いてあげたい
そう思うのに
気の利いたことさえ言えない自分が
歯がゆくてしょうがない



「最後にもう1度だけ……
 エイトにギューって抱きしめて欲しい……」



「え?」



「本物の彼女じゃないから
 ダメ……だよね……」



俺に背中を向けながら
か細い声で舞が言った



「別に今は彼女役なんだから
 抱きしめてほしければ
 いつでも抱きしめてやるから」



俺は舞を
背中から優しく抱きしめた



でも
もっともっと舞を感じたくて
まわした腕にギューっと力を入れた

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