私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

☆舞side☆

エイトに会いたい

エイトに会いたい

どうしても会いたい



2週間前
エイトの前を去ったのは私自身の意志だった



好きになっちゃいけないとわかっているのに
エイトを好きな気持ちは膨れ上がる一方

今、エイトの前から消えないと
後戻りできなくなるのが怖かった



それにエイトには
守りたいほど大事な本物の彼女がいる



でも実際は
離れて2週間たつのに
エイトが好きで好きでたまらなくて
この思いをどう処理していいのかわからない



そして昨日
エイトのことは忘れようと
私が必死に張っていた心の糸が
ぷつんと切れてしまった



もう自分の思いを抑え込むのはやめよう



それで、エイトの思いをきちんと聞きたい
私のことを、どう思ってくれているのかって



放課後
私は魔法界へやってきた



30メートルの大きなクスノキの前に座っていると
手を繋いだカップルが
私の方に歩いてきた



「エイト
 この後エイトの部屋に行っていいでしょ?」



「別にいいけど、20分だけな」



この声

この髪の色


エイトだ……



私は今すぐエイトに駆けよって行きたいのに
エイトを見つめることしかできない



エイトの視線が私をとらえた



エイトは目を見開いて
驚いた表情を浮かべると

さっと視線をはずし
私の横を通り過ぎた



お願い!

行かないで!

どうしてもエイトに
伝えたいことがあるから



そう思った時には
エイトの前まで走っていた



「エイト……

 話があるの……
 
 エイトのことが大好きなの
 ずっと一緒にいたいの

 だからお願い
 エイトの気持ちを聞かせて」



「俺は……

 カノンのことが好きだから……

 彼女役してくれてた時に
 俺、期待させるようなことしちゃった?

 迷惑だからさ
 もう会いに来ないでくれる?」



いままでとは違う
無表情で私をあしらうエイト



カノンのことが……好き……かぁ



エイトの口から初めてきいた言葉に
私はショックが隠しきれない



「エイト、行こう!

 あの子、魔法界の王子と
 付き合えるって思っていたのかな?

 身のほど知らずって感じだね」



エイトと彼女さんは
手を繋いだまま去って行った




カノンさんの言う通りだな……


エイトと付き合えるわけないって
わかっているのに……


私って、身のほど知らずだな……



エイトを見て天使のように微笑んだ
カノンさんの顔が頭から離れない

そして
カノンさんが好きと言った時の
エイトの瞳も



エイトの彼女役なんて引き受けなければ
こんなに好きになることもなく
こんな辛い思いもしなくてすんだのにな……



きっと今頃は
エイトの部屋で二人きりなんだろうな



つらいよ……



エイトにはっきりフラれたのに
それでもエイトが大好きでどうしようもなくて

私は大粒の涙をぽろぽろ流しながら
クスノキに向かった


< 33 / 57 >

この作品をシェア

pagetop