私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

前から3人組の女の子たちが
おしゃべりしながらやってきた



「エイト王子の髪と同じ色の花が
 ダルの森に1輪だけ咲いてるって知ってた?」



「この先のあの森でしょ
 知ってるよ!
 私、この前見に行ったもん」



「私も見に行ったことあるよ
 紫に光り輝いて、綺麗なんだよね」



「二人ともずるい!
 今度私も連れていってよ」


 
そんな話をしながら
私とすれ違って歩いて行った



エイトの髪と同じ色の花かぁ
どんな花なんだろう

見てみたいな



私は、女の子たちがさし示した森に向かって
歩き出した





「ここかな?」



森の中を進むと
目の前に軽自動車ほどの
大きな紫の花のつぼみがあった



木に覆われた薄暗い場所で
キラキラと紫の光を放っていた



「開いたら
 もっと綺麗だろうな……」



そう思い花に近づこうとした時
木々の枝々が急に伸びはじめ
私が入ってきた入り口をふさぎだした



「キャ!!」



気づいた時には
草花の弦で
私の手足が縛られていた



何?これ?

私……

身動きが取れない……



「誰か!助けてください!」



精いっぱい叫んでも
あたりはシンと静まり返っていて
近くに人がいる気配は全くない



ゆっくりと
紫の花のつぼみがひらき始めた



完全に咲いたその状態は
鋭い歯が360度並んだ人食い花だった



口からは
消化液のような粘りのある液体が垂れ

人食い花の周りの草花は
その液体がかかるとすぐに茶色くなり
溶けて消えていく



歯をむき出しにして
すごい勢いで
人食い花が私に飛びかかってきた



ピカーン



胸元のペンダントが光り
紫のシールドが私を覆った



そのシールドに跳ね返され
人食い花は後ろに倒れこんだ



また
このペンダントが助けてくれた……



安心したのもつかの間
人食い花は
何度も何度もシールドに体当たり



とうとう
シールドにヒビが入ってしまった



怖い!怖い!

このままでは食べられちゃう!

エイトお願い!

助けて!!!




ズバシャ!!!



私の目の前で真っ二つに斬られた花



私を助けてくれたのは誰?



そこには
紫の髪をなびかせた大好きな人が立っていた





「怖い思いさせて……悪かったな」



「エイト……」



私は恐怖から解き放たれた安心感と
ずっと会いたかった人が目の前にいる奇跡で
涙が止まらない



「エイト……
 会いたかった

 どうしても会いたかった」



「……」



「エイトお願い、
 もう一度だけでいいから、私の話を聞いて」



「ごめん、ムリ」



「どうして?」



「俺、カノン以外
 好きになるつもりないから」




「じゃあなんで、助けに来てくれたの?

 会いたくないくらい私のことを嫌いなら
 助けになんて来ないでよ」



「お前も魔法界の一人だろ

 国民を守るのも、王子の役目だからな

 ヤナギ、近くにいるんだろ」



「はい、エイト様」



「この子を
 人間界の入り口まで送ってやって」



「承知しました」



「ヤダ!エイト!行かないで……」



エイトは私の顔を見ることもなく
その場から消えた

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