私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
結局、紫の封筒にナイフを入れたのは
夕飯を食べ終え
クララと部屋でおしゃべりをしているときだった
「クララ
この手紙、私より先に読んでくれない?」
「え?
私が読んでいいの?
誰からの手紙?」
「……エイト」
私はクララに
エイトのことを話していた
会ったこともないエイトに
『彼女役をして』って言われたこと
放課後30分
エイトと魔法界で過ごしていたこと
『俺のことは好きになるな』
と言われていたのに
そんな約束を守れないほど
エイトを好きになってしまったこと
エイトが私に彼女役を頼んだのは
カノンさんを
エイトファンの女子たちから守るためだったこと
そして3月には
エイトはカノンさんと婚約をすること
クララの前でこんな自分をさらけ出したのは
初めてというくらい大泣きをした
「やっぱりこの手紙は
舞ちゃんが読まなくちゃ」
「読むのが怖いの」
「私が隣にいてあげるから。ね。」
クララに両腕をさすってもらいながら
私はその手紙を読んだ
☆☆☆
舞へ
お前に
彼女役なんて頼んで悪かったな
俺にはカノンがいてくれるから
もう舞と会うことはない
じゃあな
☆☆☆
「ク……クララ……」
もう私は
クララに抱き着いて泣くことしかできなかった
「舞ちゃん、机の上……」
「な……なんで……」
机の上に置いてあった魔法界への通行許可書が
紫色の炎に包まれている
「これがなくなっちゃったら
もう魔法界に行けないのに」
私は急いで火を消そうとしたが
机の前に着いたときには
通行許可書は
跡形もなくなくなっていた
「なんでエイトなんか
好きになっちゃったんだろう
初めからわかってたことなのに
エイトが私を好きになるなんて
絶対にないって」
「舞ちゃん」
「クララ……辛いよう……
もうエイトに会えないなんて……」
泣き崩れた私を
クララが優しく包み込んでくれた
「クララごめんね
こんな惨めな姿さらけだしちゃって
泣いたらなんかスッキリした
もう、エイト以上に
大好きな人を見つけてやるんだから」
「舞ちゃん……
自分の気持ちに嘘ついているでしょ」
「……」
「本当は、エイト様が大好きなんでしょ
隣にいて欲しいんでしょ」
「……」
「好きならエイト様のこと
思い続けてればいいじゃん」
「私なんかが
魔法界の王子と結ばれるはずないでしょ
魔法の一つも使えないんだよ」
「それなら私が
舞ちゃんに魔法の使い方を教える」
「人間界で育った私は
魔法界のことを全く知らないんだよ」
「それなら
今から知っていけば良いだけでしょ
魔法界の歴史も、掟も
城のこともなんでも私に聞いて
一応、エイト様の家庭教師をしてたんだから
いくらでも教えてあげられるから」
「それにエイトは……
私なんか好きじゃない……」
「それはエイト様が
舞ちゃんの魅力に気づいていないだけ
まだ
カノンさんと婚約したわけじゃないんだよ
エイト様に好きになってもらえるように
一緒に頑張ろうよ。ね。」
「でも……」
「まだエイト様が好きなら
その思いを大事にしてほしい
辛いときは
私が舞ちゃんの隣にいるから」
クララの言う通りだ
私はまだ
心の中を占領されちゃうくらい
エイトのことが大好きだ
エイトを諦めらめることなんてできない
エイトと一緒にいれるために
私にできることを精一杯したい
――たとえ結ばれない恋だとしても――
こうして私は
学校が終わるとクララ先生に
魔法界について教わる日々が始まった
お母さんに頼んで
毎日夕飯の支度の時に
魔法界の料理を伝授してもらった
もっとエイトに可愛いって思ってもらいたくて
魔法界のファッション雑誌を取り寄せて
流行メイクも猛特訓
あっという間に月日は流れ
庭の4メートルはあるイチョウの葉が
黄金に色づき始めた11月
秋が深まっても
エイトとはずっと会えていない