私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

☆舞side☆


二人とも
おいしいって言ってくれるかな?



鶏肉を油で揚げながら
なぜか今家にいる
転校生君のことを考えていた



名前を聞いた時には
ビックリして思わず顔を確認してしまった



『マトイ』



エイトと山花族の村を訪れた時に
私が赤ちゃんに良いかなって提案した名前



でもマトイくんの顔を見て
やっぱり違うよねって思った



あの紫の髪でも
小麦色の肌でも
大好きな切れ長な目でもなかった



声も全く違う



まぁ
女子たちに囲まれているところは一緒だけどね



そのマトイ君が
どういうわけか柚葉くんと家に来て
今、我が家の庭に花を植えてくれてるなんて



クラスの女子にバレたら
一斉に無視されそうだな



触らぬ神に祟りなし

マトイ君とは
特に学校では話さない方がよさそうだ




「柚葉くんもマトイ君も、夕飯ができたわよ」



お母さんの声でダイニングの席に着く二人



寮の8人掛けのダイニングテーブルに
お母さんと私、柚葉くんとマトイ君の
異様な組み合わせで
今から夕飯をいただくなんて
なんか居心地が悪い



「こっちはお母さんの実家の味だから
 柚葉くんとマトイ君には刺激が強すぎかも

 こっち側は、普通に食べれると思うけど」



「いただきます」



私のその言葉に
迷わず魔法界の料理を食べるマトイ君



大丈夫かな?

人間界では食べない独特なスパイスだから
おいしくないんじゃ



「舞、すっげーうまいじゃん」



え?



今のマトイ君の微笑み
なぜだろう……


エイトの微笑みと重なってしまった



「それにこの、優しい甘さの卵焼き
 俺、すっげー好きだわ」



ストレートに私の料理を褒めてくれて
ちょっと心がくすぐったかったが
素直に嬉しかった



マトイ君って、なんか怖そうって思ったけど
案外親しみやすい人なのかも



エイトも、そういうところがあったな



上から目線で
言いたいことをズバズバ言うくせに
急に優しい目で微笑んでくれた



どんな時でも
エイトのことを思い出しちゃうな


やっぱり今でも
私はエイトが大好きだ



「ただいま帰りました
 って、今日はお客さんが来ていたんですね」



大きなバックを抱えて帰ってきたのは
この寮に住むナズナさん



「マリアさん、舞ちゃん、聞いて!!

 私のデザインしたドレスをね
 カノンさんが気に入ってくれたの」



カノンさん……って


エイトの許嫁……だよね



エイトとカノンさんの婚約の準備が
進んでいるってことだよね



「ナズナはね
 人気のウエディングドレスデザイナーなの

 どんなドレスを気に入ってくれたの?
 見たい!見たい!」



お母さんがナズナさんにお願いすると

「カノンさんがドレスを着て
 撮った写真があるから、ちょっと待っててね
 あ、これこれ」

そう言って、ドレスの写真を見せてくれた



そこにはドレスを着て
『私幸せです』オーラを振りまいている
とびきり笑顔のカノンさんがいた



カノンさんって
お姫様みたいにかわいい……



そりゃ、エイトも私じゃなくて
カノンさんを好きになるはずだよ



私には絶対似合わないような
淡いピンク色のフリルがたくさんついたドレス


どう頑張っても、私はカノンさんに勝てそうにないな……



「かわいいドレスでしょ

 カノンさんって
 可愛くて守ってあげたくなる感じでね

 だからフリルたっぷりのドレスを提案したの
 そしたら気に入ってくれたのよ」

「可愛いわね

 私も楽しみだわ
 いつか舞がウエディングドレスを着る日が」



お母さんは目を細めて
何か妄想をしているようだ



魔法界と人間界の恋の掟がなくなって
お母さんは人間と恋をしても良いよと
言ってくれるようになった



でもこの先、私は
エイト以上に
誰かを好きになることがあるのかな……



「私には、ドレスなんか似合わないよ」



「舞は私の子なんだから、そんなことないでしょ

 この寮さえ継いでくれれば
 相手は誰だっていいんだから

 柚葉くんかマトイくんなら
 お母さん万々歳よ」



「ちょっとお母さん、やめてよ」



私はこれ以上
幸せそうなカノンさんの
ドレス姿の写真を見たくなくて
秋の夜風にあたろうと外へ出た



エイトに振り向いて欲しくて
自分磨きや魔法界の勉強をしてきたけど
これって無意味なんじゃないかな



天使みたいにかわいいカノンさんを
好きなエイトが
私なんかを好きになるわけないよ



もうエイトのことは
本気であきらめた方がいいのかもね



そう思ったら
涙がつーっと頬をつたった



「どうかしたのかよ?」



「え?」



あわてて涙をぬぐって振り向くと
そこにはマトイくんが立っていた



「なんでもないよ

 ただ……もう頑張ることを
 やめちゃおうかなって思って

 マトイ君って、好きな子とかいる?」



「……」



「あ、急にごめん。答えなくていいよ。
 私はいるんだ
 
 その人には好きな人がいて
 彼女さんのことをすっごく大切にしているの

 私はもうフラれているのに
 好きで好きでしょうがないの

 怖いでしょ。私。ストーカーみたいで。」



「別に……」



「毎日その人のことばっかり
 考えちゃって辛いんだ

 どうすれば、楽になるのかな……

 あ、ごめん。マトイ君にこんな話をして
 そろそろ部屋に戻ろっか」



「いるよ」



「え?」



「さっきの質問の答え 

 好きな子……いるよ……」



「そうなんだね
 でもマトイ君なら
 すぐに付き合えちゃいそうだね」



「じゃあさ、俺とつきあってくれる?」



……


え?


……


わたし?



「冗談……だよね?」



「俺、マジなんだけど」



どういうこと?


昨日、転校してきて
話したのはこの家に来たさっきが初めて



それなのになんで
私のことが好きなんて言うの?



シャララララン

「やべ!俺もう帰んなきゃ

 舞、明日の土曜日
 1日俺に付き合って」



「え?」



「俺の最後のお願いだから
 本当に頼む」



その真剣な顔をみたら
どうしても断ることができなかった



「うん。別にいいけど……」



「じゃあ、明日の9時に
 お前の家に迎えに来るから」
 


そう言い残し
お母さんたちに丁寧にお礼を言うと
マトイ君は帰って行った


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