私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
☆エイトside☆
人間界にいられる時間は
残り30分だけ
この3日間
舞にマトイとしての
俺を好きになってもらおうと思ったのに
結局ダメみたいだ
俺は舞と一緒にいられるだけで幸せで
結局わかったのは
俺がずっと一緒にいたい相手は
カノンではなく舞だということ
人間界に来る前より
舞のことが余計好きになってしまったということ
そして
もし舞が、マトイとしての俺を好きになったら
本物の俺のことは好きじゃなくなるんじゃないかということ
俺が舞と結ばれるためには
マトイとしての俺を好きになって
もらわなければいけないのに
「マトイ君……」
二人でベンチに座り
遠い目をした舞が俺に話しかけてきた
「久々に、心から楽しいって思えたよ
今日はありがとう」
「ああ
そうだ!これ、舞にやるよ」
「なに?これ?」
「さっき買った、ウサギの置時計
俺も同じのを買ったから、お揃いな」
「映画やお昼代も出してもらったのに、
時計までもらえないよ」
「いいの
俺があげたいって思ったんだから
勉強机の上に置けよ。絶対だからな」
「うん」
俺はどうしても
舞とお揃いの物を持っていたかった
人間界と魔法界で
離れている俺たちを繋ぐものを
どうしても舞に渡したかった
「私、大好きな人がいるって言ったでしょ
その人と初めて会った時に、お願いされたの
彼女役をやってって
その時に
『俺のことは好きになるな』
って言われたのに
どうしようもないくらい好きになっちゃった
でも、その人には大好きな人がいて
その彼女を守るために
私に彼女役を頼んだんだって
普通そこまで言われたら、諦めるよね
それなのに私
待ち伏せして大好きって伝えたり
私の話を聞いてって泣き叫んだり
今思えば
嫌われて当然なことしてたな……」
「でも、今もまだ好きなの?」
「うん
嫌いになろうと思っても
好きって気持ちが募って行っちゃうの
お願いだから会いたいって願っちゃうの
だから
その人が彼女さんと婚約する3月までは
諦めないことにしたんだ
ちょっとでもその人に
ふさわしい女性になりたくて
今努力してるところなの」
「だから
毎日学校で分厚い本を読んでいるのか?」
「うん
料理も頑張っているし
家に帰ってからも勉強してるよ
そんなこと、その人にバレたら
余計嫌われそうだけどね」
舞……
俺は舞のことが大好きで
でも魔法界のために
カノンを選ばなければいけなかった
舞の幸せのために
俺のことを嫌いになってもらわなきゃと
舞を傷つけることをたくさんした
それなのに
今でも俺のことを
こんなに思い続けてくれていたのか……
「そいつのこと思い続けているのって
辛いんだろ?」
「うん」
「それなら、俺にすればいいのに」
「……」
「そいつのこと、好きなままでいいからさ」
「……
私がマトイくんと付き合ったら……
ずっと隣にいてくれる?
お昼休みも、学校帰りも
一緒にいてくれる?」
「……」
今度は俺が
答えられなくなってしまった
俺は今日で魔法界に帰る
明日からは
学校で舞と会うこともできない
親父が舞と付き合うことを許したとしても
当分はエイトとしてもマトイとしても
舞には会えない
「マトイ君ごめんごめん
今言ったことは忘れてくれる?
マトイ君と一緒にいるとね
恋の辛さを忘れられたから
ちょっと現実逃避しちゃった
でもやっぱり
私の大好きな人は、その彼なんだ
だからマトイ君とは、付き合えない」
「そっか……」
本当は
マトイを演じている自分を
ムリヤリでも舞に好きになってもらおうと思った
それでしか
俺と舞がこの先一緒にいられる方法はないから
マトイとしての俺は
舞の心を奪い去ることはムリみたいだ
本物の俺のことを大好きでいてくれるのは
嬉しいんだけどな……
シャララララン
魔法界に帰る時間を告げる音が
悲しく言霊神社に響いている
舞とは……
これでサヨナラだ……
「もう舞のことは諦めるから
ちょっとだけ抱きしめさせて」
「え?」
俺は舞の返事も聞かず
舞の背中に手を回すと
腕に力を込めてギューっと抱きしめた
このまま俺の腕の中で
舞を捕まえていたい
舞のことを
離したくない
それなのに
タイマーの音は
俺たちを引き離そうと鳴り続けている
俺はゆっくり体を話すと
舞の瞳を深く見つめ
優しく微笑んだ
「舞、じゃあな」