私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

ここは……

どこ……?



長く続く廊下に
私はぽつんと佇んでいた



魔法界……だよね……



廊下には部屋に入るドアがたくさんあって
私はどこに行けばいいか全くわからない



この建物のどこかに
エイトがいるのか
それすらもわからない



とりあえず
一つずつ部屋のドアを開けていこうと思った時
前から
フワフワと何かが飛んできた



空を飛ぶ……ハリセンボン?



その生き物は私の前で止まり
真ん丸な目をパチクリさせると
クルリと私に背中を向け
またフワフワ飛んで行ってしまった



何だったんだろう……

挨拶しに来てくれたのかな……



ぼーっと空飛ぶ
ハリセンボンを眺めていると
その子が急に縦に高速回転して
私の胸に体当たりした



「イタタ
 もう、なに?なに?」



何度も何度も体当たりしてくるその子に
もうやめて!と怒鳴ろうとした時

その子の目から
大粒の涙がボロボロ流れているのに気がついた



「なんで……
 泣いているの?」



私の問いかけにビクッとして
また私に背を向けてフワフワと飛んで行った



そして私も
その子についていくことにした




空飛ぶハリセンボンが止まったのは
紫色のドアの前



「もしかしてここに
 エイトがいるの?」



私の問いかけに
目をパチパチさせる



「ありがとう
 行ってくるね」



私はその子に微笑むと
目を閉じ、体中に空気が行きわたるくらい
ゆっくりと深く深呼吸をした



『トントン』



ドアを叩いても返事がない



『トントントン』


もう一度ノックしてみた


やっぱり返事がない



私がゆっくりとドアを開けると
部屋にの奥に
窓から外の景色を眺めるエイトが佇んでいた



「ヤナギ……

 お前がノックして入ってくるなんて
 めずらし……」



「エイト……」



エイトは私の顔を確認すると
目と口を開いたまま固まってしまった



「舞……
 どうしてここに……」



「エイトに会いたくて
 どうしても会いたくて

 エイトが婚約を交わす前に
 そうしても伝えたいことがあるの」



私はまっすぐエイトの瞳を見つめた



「私なんて、魔法界のエイトと
 結ばれるわけないってわかっている

 エイトはカノンさんのことが大好きで
 私になんかなんの興味もないってことも
 わかっている

 でも、どうしてもエイトに伝えたいの

 離れている間も
 ずっとエイトに会いたかった

 今でもエイトのことが、大好きです」



いままでずっと伝えたかった気持ちが
体中からあふれてきて
私は涙が止まらなくなった



「じゃあなんで
 俺を選んでくれなかった?」



「え?」



「俺が舞に会いに行ったのに……

 大好きだって伝えたのに……

 あれが、最後のチャンスだったのに……」




エイト
何を言ってるの?

私に会いに来た?

大好きって言ってくれた?



「私、全然知らないよ

 エイトが会いに来てくれたら
 絶対にわかるもん

 だってエイトのことが大好きだか……

 え?」



私はエイトの机の上で
カチカチと聞きなれた音がするものを見つけた



「ウサギの……置時計……

 もしかして……マトイ君って……
 
 エイトだったの?」



「ああ
 親父がくれた、最後のチャンスだったんだ

 顔を変えて舞の前に現れても
 それでも舞が俺を好きになったら
 この婚約を考え直すって」



「だって……

 エイトだって……わからなくて……」



「変わったのって、外見だけじゃん
 中身は俺のままだったのに

 俺、信じてたんだぜ

 舞なら絶対に、顔なんか違っても
 俺を好きになってくれるって

 どうせ舞もさ
 顔だけで俺のこと好きになったんだろ?」



「違うよ……そんなんじゃないよ」



「じゃあなんで気づかなかった?
 俺への思いが、その程度ってことだろ」



エイトに返す言葉が
思い当たらなかった



「舞は魔法界の女王にはなれない

 俺は舞の家の寮を継ぐことはできない

 初めから絶対に結ばれないんだよ
 俺たちは」



「さっき言ってくれえたのは本当?
 私のこと好きだって」



「ああ。好きだったよ

 でも、その思いはもうなくなったよ

 この先、俺の隣にいるのは舞じゃない
 カノンだから」



「エイトお願い……

 カノンさんと婚約しないで……

 大好きだから……お願い……」



私はその場に泣き崩れた



「ヤナギ!」



エイトの声とともに
一瞬でヤナギさんがやってきた



「舞を、連れていけ」



「エイト……一緒にいてよ。お願いだから……」



「もう舞に会うことはない
 じゃあな」


 
エイトは背中越しに私にそういうと
ヤナギさんに腕をつかまれ
一瞬のうちに城の庭に瞬間移動した




「舞さん
 エイト様にはカノン様という
 許嫁がいるんです

 カノン様も
 子供のころから魔法界の女王になるために
 言われたとおりに勉強や魔法などを
 励んできたんです

 魔法の一つも使えないあなたが
 カノン様に勝てるところは一つもありませんよ」



ヤナギさんの言葉が
鋭く胸に刺さった



その通りだ



エイトと付き合うということは
魔法界の女王にいずれなるということ



誰が見ても
私よりも女王にふさわしいのは
カノンさんだろう



それでもエイトへの思いが
どうしても止められない



好きで好きでたまらない




また一緒に
魔法界のいろんな場所を見たい



ソフィアナ海で
一緒に星を眺めたい



私の隣で
たくさん笑っていて欲しい




城の中庭には
エイトとカノンさんの婚約の儀を一目見ようと
溢れんばかりの人でにぎわっていた



お祝いムード一色



「悔しいけど
 エイト王子のお相手がカノン様なら納得よね」


「私もカノン様が女王様になるなら
 エイト王子を譲ってもいいわ」


「もう~あなたのエイト王子じゃないでしょ」



エイト王子ファンの女の子たちも
カノン様を認めているらしい



私は微笑みあって喜び合う
国民に逆らうように
泣きながら城の外へ歩いた



そして私は逃げるように
人間界に帰った


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