私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

放課後
私は走ってクスノキの前に行った



「おせーよ!舞!」



「これでも一生懸命走ってきたんだからね

 学校からクスノキまで
 歩いて30分はかかるんだから」



「そうだよな
 ごめん。言い過ぎた」



急に謝ったエイトに拍子抜けしてしまった


いつもは、こんな素直じゃないのに



「ソフィアナ海に行くか」



「うん」




私たちはソフィアナ海につくと
エイトが魔法で出してくれた
ピンクの花の船に乗った



「舞さ、なんでストレートの髪に
 パーマかけたんだよ」



「え?

 だってお母さんが
 ゆるフワの方が可愛いからって
 美容院を勝手に予約しちゃったから」



「それにさ、香水か何かつけてんだろ」



「それもお母さんにムリヤリつけられたの

 髪型、似合ってない?

 この香り、エイトは嫌い?」



「そう言うんじゃなくて……

 寮の専門学校に来るのに
 可愛くしてくんじゃねえよ

 今日みたいに、男が寄ってくるだろ

 舞が可愛くしていいのは
 俺の前だけだからな」



うつむきながら
恥ずかしそうにしているエイト



それって、嫉妬してくれてるのかな


それだったら、かなり嬉しい



でも……

カノンさんとは……

まだ婚約をしてるんだよね……




「俺、カノンと別れた」



「え?
 婚約してから、まだ2週間くらいしか
 たってないじゃん」



「あいつさ、とんでもない奴だったんだよ

 舞を海に落とすように指示したのも
 人食い花に襲わせようとしたのも
 カノンだった」



「なんでカノンさんが
 指示したってわかったの?」



「城の監視役のカグラが
 魔法界の防犯映像を片っ端から見て
 見つけてくれたよ

 ヤナギに命令しているカノンをな」



「ヤナギさんって……

 エイトの執事だった人だよね?」



「子供のころから
 カノンが好きだったんだって

 カノンに幸せになってもらいたくて
 命令に従ってたんだと」



「カノンさんとヤナギさんはどうなるの?」



「この城からは出ていってもらったよ

 でも今回のことは
 さすがに俺にも責任あるからさ

 子供のころから俺の許嫁になる運命で
 カノンの自由を奪っていたんだからな

 これからは二人で
 山花族とともに生きていくんだってさ」



「エイト……
 優しい所あるじゃん

 もっと恐ろしい罰を下したのかと思って
 冷や冷やしたよ」



「恐ろしい罰ってなんだよ」



「例えば

 ひもでグルグル巻きの逆さ宙づりにして
 人食い花に食べさせるとか?」



「俺がそんなことすると思ってんのかよ?」



「アハハ、思ってないよ

 エイトが魔法界の人を痛めつけないことくらい
 私もわかってるよ」



「魔法界の王子としては、甘すぎなのかもな」



「私は、そんな甘いエイトが好きだけどね」



「舞
 俺さ、彼女役を頼む前から
 舞のことが好きだったよ」



「え?」



「舞が毎日のように城に来て
 『クララを返して』って泣いてたじゃん

 その姿を、城の中から見てた

 見るたび見るたび舞のことが好きになって
 俺が舞の願いを叶えてやりたい
 笑顔にしてやりたいって思った

 でもさ、俺は魔法界の王子として
 カノンとの婚約が決まっていた

 それでも、どうしても舞に隣にいて欲しくて
 『彼女役をやって』って頼んだ」



「出会う前から
 私のことを好きでいてくれたってこと?」



「ああ。
 舞が彼女役をやめて会えなくなっても
 ずっと舞に会いたくてしかたがなかったよ」



 
エイトがずっと私のことを思っていてくれたなんて
1ミリも思っていなかった



今もカノンさんが大好きで
私の恋なんて叶わないと思っていた



エイトのことを諦めなくて良かった



自分の思いに正直に生きて良かった




「俺さ
 もう自分の気持ちに嘘をつくのをやめた

 大好きな人と一緒にいるって決めた

 まだ親父を説得できていないけど
 絶対に舞と一緒にいることを認めさせてみせる

 だから
 これからの人生
 俺の隣で一緒に歩んでいってほしい」



私は嬉しくて嬉しくて
涙が流れ続けるのを止められない



「舞、返事は?」



「うん
 私もエイトの傍を離れないから、絶対に」



エイトの温かい指が
私の頬を流れる涙をぬぐった



まっすぐに私を見つめるエイトの瞳に
吸い込まれてしまう



エイトは優しい目をして微笑むと
私の頬に手をあてて
引き寄せるように私にキスをした
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