偽装恋人などごめんです!


そんなわけで香乃を恋人扱いするようになってからは、時折、香乃の家まで送っていくこともあった。
大学生の野乃と挨拶程度の会話をすることもあって、妙な気分になったことを覚えている。

あんなに、細い腰だったろうか。
あんな風に笑う子だっただろうか。

久しぶりに見た野乃は完全に女の子だった。
ショートボブの髪が揺れ、ミニスカートがよく似合う。露出しすぎじゃないかとも思うが彼女にはそれがよく似合っていた。

まるで別の女の子みたいに見えることに寂しさを抱えつつ、それでも野乃らしさを見つければほっとした気分にもなり。
そのたびに俺は、頭を振って邪念を追い払った。

(俺はロリコンじゃない)

そうだ。八歳も年下の女の子をそんなに気にしてどうする。落ち着けよ、俺。

そして二年が経ち、香乃の彼氏が転勤で戻ってきたのをきっかけに、偽装恋人契約は解消した。
それから一年後、香乃の結婚式の二次会で、俺はまたもや久しぶりに野乃に会ったのだ。

ボーイッシュなイメージの強かった野乃も、今日ばかりは新婦の妹として、あまり派手ではない化粧をし、清楚なワンピースに身を包んでいた。

その瞬間、全身に響くような脈動を感じた。

(……誰が子供だって?)

そこにいる野乃は、十分に大人で、十分に女だったから。

「あれ? 佑さんもよばれてたんですか?」

俺に気づいた彼女は、ふっと表情をやわらげた。その瞬間、幼いときの面影が見えて、ああやっぱり野乃だと思い、なぜだか俺はホッとする。
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