若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
『夏休み中ずっとバイトだってよ。奨学金も借りているんだってさ』

『ああ、向葵ちゃんね。かわいいよな。今のうちに摘み取って自分の色に染めたいとか思うわ』
『まだ十九歳だしな。化粧なんかしなくてもピチピチな肌色だもんな』

その後彼らが強引に飲み会に誘っているのを阻止したのは、別に恋愛感情があったからではない。
自分が彼女と同じようにバイトを重ね自力で大学を卒業したからかもしれないが、花森向葵という花を簡単に手折らせるわけにはいないし、守ってあげたかったのである。

『ひたむきに生きている姿に触れるのは気持ちがいいものです』
やがて上司となった彼との雑談の中でそんな風に彼女の話をした時、彼がどんな様子だったかはあまり記憶には残っていない。

よもや女性として彼女に興味を持つとは、当時の自分は思ってもいなかった。

過去に彼が一時のパートナーとしていた女性は、どちらかと言えば羽原佳織のような意思の強そうな美人だ。

結婚式で着飾った向葵は見違えるほど美しかったが、彼女の美しさはやはり可憐さにある。過去の女性たちと共通点はない。
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