若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
彼がずっと一緒にいてくれたから寂しい思いをすることはなかったけれど、他の女性たちのように会話に参加するすることもできない。
恐縮するばかりで、歯がゆい気持ちさえ起きなかった。

無力を実感するのはああいうことを言うのだろう。

深紅のドレスを身に纏った女性が、ショールを使用人に渡す様子を見ながら思った。
自分は受け取る側の人間だ。
頭を垂れて、主人から恭しく受け取るヒエラルキーの下層のほう。

偽者の、仮の妻。
二年後の夢を描いてはいけない。


飛行機の中から、離れてゆくヨーロッパの大地を見下ろした。

――素敵な想い出をありがとう。そして、さよなら私の夢。

そんなことを思い出すと、打って変わって哀しみだけが込み上げる。ちりちりと心が痛くて涙が溢れてきた。

そんな思いを振り切るように、向葵は途中になっている洗濯物の整理を再開する。

――二年間しかないんだもの。
悲しんではいられない。
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