若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
次に佳織と矢神に「どうぞ」と声を掛け、ふたりがエレベーターから出ると、彼は胸ポケットの財布を取り出し、何枚かの紙幣を抜いて彼女の手に握らせ、若い女をエレベーターに押し込んだ。

「バイバイ」
「あっ」という女の声と共に扉が閉まっていく。

妻の勝ちだ。

彼らの脇を通り、レストランの扉を開けた矢神について入る前に、佳織は柊子を振り返った。
そして彼女に向かって、小さくガッツポーズを作って見せる。

彼女もまた佳織にウインクを返し、そして鮮やかに笑った。


「今日は事件続きですね」

「盆と正月が一緒に来たみたいです」

アハハと笑う。

少し遅れて真行寺夫妻がレストランに入ってくるのが見えた。

妻の腰に手を回し、どうみてもご機嫌の様子の夫に対し、妻はツーンと澄ましている。それがなんだか微笑ましい。

「そんなに愛しているなら浮気なんかしなければいいんですよ、全く」
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