若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

上司、月井夕翔は、なにを思っているのだろう？
既婚者になることで心境の変化などはないのだろうか？
他人の人生を背負うことに対する恐れのようなものは、感じないのだろうか？

普段から、関連企業をいれれば数万人にのぼる社員たちの人生を背負っている彼の立場にいると、感覚はどこか違うのだろうか。

――もしや。自分が結婚を重く考えすぎているのかも？
遂には当事者ではないのにマリッジブルーにでも陥ったような、なんとも言えない複雑な思いが彼の胸で疼いた。

矢神は現在三十歳。
仕事に追われる日々で、恋人もいないし結婚など考える余裕もないが、そろそろ自分も結婚について少し考えてみようか。あげくには、そんなことを考えながら歩き出した。

「矢神さん」

聞き覚えのある声に振り返ると、そこには見知った顔のふたりがいる。

「ああ、こんにちは」