バッドジンクス×シュガーラバー
最後に退出した牧野さんがドアを閉め、私たちはラボに隣接されたこの小部屋をあとにする。



「そうだ、今日のお昼一緒にどう? お祝いにちょっといいお店のランチ奢っちゃう」

「えっ! そんな、いいんですか?」



前方にえみりさんと私、その後ろを久浦部長と牧野さんが歩く形で廊下を進んでいく。

恐縮する私へ、えみりさんがパチンと魅力的にウインクをしてみせた。



「もちろん。さてあとは、本部長プレゼンと最終関門の役員プレゼンねー」

「ありがとうございます……! はい、しっかりいいものを送り出せるように、がんばりま──」



歩きながらえみりさんと話している最中、不意に視界が揺れてぐらりと足もとが傾いた。

そのまま背中から床に倒れ込むかと思われた私は、けれども斜め後ろを歩いていた久浦部長が伸ばした腕によって支えられ、なんとかその場に踏みとどまる。



「憂依ちゃん?!」

「小糸さん?!」

「小糸! 大丈夫か?!」



そばにいた3人がそれぞれ声をかけてくれるけれど、私は部長に抱きとめられたままとっさに言葉を返せない。

ただ、ぎゅっときつく目を閉じて浅い呼吸を繰り返した。



「やだ、顔真っ白……! 貧血かしら」



耳鳴りの向こうから届いたえみりさんの悲痛なセリフに、目は開けられないままなんとか唇を動かす。



「す……すみません……急に、くらっとして……」



ここ最近の多忙のせいだろうか。しかも今日はプレゼンの緊張のためかいつもより1時間以上早く目が覚めてしまい、食欲もわかず朝食を抜いている。

無事に部長プレゼンが通ったことにホッとしたら、急に疲労感が押し寄せてめまいを覚えたのだ。
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