バッドジンクス×シュガーラバー
きっと今の私は涙目で、迫力なんてものは皆無なんだろうけど……それでも構わず、睨み続けた。

対して久浦部長はこちらの必死の抵抗にも怯むことなく、真顔で当然のように返す。



「あ? なんで構うのかって……そんなの、おまえに触りたいからに決まってんだろ」

「…………え」



たっぷりの間のあと、思考が停止した私の口から漏れ出たのは一音のみ。

動いていたのにも気づかなかったエレベーターが医務室のある階に到着し、私を抱えた久浦部長がゆっくりとドアを通り抜ける。



「あとで、浅村あたりにおまえの荷物を持ってこさせる。大人しく休んでろよ」



いつの間にか医務室へとたどり着き、いつの間にかソファに降ろされた私は、ズレたメガネを手ずから直されながら宥めるような久浦部長の言葉を聞いていた。

放心状態でされるがまま、黙ってコクリとうなずく。

部長はふっと頬を緩ませたあと、私の頭のてっぺんに柔らかく手のひらを載せる。



「いい子だ」



まるで砂糖を煮詰めたようなとびきり甘いささやきを残し、久浦部長が医務室を出ていった。
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