バッドジンクス×シュガーラバー
その日の夜、時刻は21時前。
私は自宅のベッドに腰かけ、耳にあてたスマホから聞こえるコール音の間に深呼吸を繰り返していた。
だけどプツッと音が途切れた瞬間、落ちつけたはずの心臓がまた早鐘を打ち始める。
《もしもし? 憂依?》
スピーカー部分から耳の中に流れ込むのは、聞きなれた声だ。
私はこっそり深く息を吐いてから、スマホを握る手に力を込める。
「……うん、お母さん。憂依だよ、久しぶり」
《もー、電話なんてほんとに久しぶりじゃない~元気にしてたの? 異動先の仕事はどう?》
「ん、元気だよ。仕事も、忙しいけどなんとか楽しくやってる」
微笑みながら答えると、電話口からはことさら弾んだ声が上がった。
《あらー、いいことじゃない! なんだっけ、新しい部署では商品開発の仕事をしてるんだっけ?》
「そうだよ。私はスイーツの担当で……実は9月に、私が初めて開発した商品が発売される予定なんだ」
《えぇっ!? すごいじゃないの~!》
「へへ。無事発売できるように、今がんばってる最中」