バッドジンクス×シュガーラバー
「では、お先に失礼します」

「はーいお疲れさま~」



えみりさんはじめ口々に挨拶を返してくれる同僚たちに頭を下げながら、通勤用のバッグを持ってデスクを離れる。

途中、チラリと目を向けた久浦部長のデスクは、ずいぶん前から空席だ。

私はそのままドアをくぐり抜け、デイリーフーズ部のあるオフィスをあとにする。



「ふう……」



エレベーターホールを目指しながらため息をついたのは、無意識だ。

お母さんに、離婚した父の話を思いきって聞いて──その結果、ずっと昔から抱き続けていた罪悪感は、必要ないものだったと知ることができた。

背中を押してくれた久浦部長に、一応このことを報告したいと思うんだけど……なんだか気恥ずかしく、そしてなんとなくタイミングも掴めなくて、あれからすでに数日が経ってしまっている。

……なかなか、ふたりきりになれる機会もないんだもんなあ。

そんなことをぼんやり考え、すぐさま自分の思考に動揺する。

少し前まで、異性とは離れることばかり考えていたのに。

まさか私が、特定の男性とふたりきりになることを望んでしまう日が来るなんて。どこか熱っぽく感じる頬に片手をあてながら、また大きな吐息を漏らす。
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