バッドジンクス×シュガーラバー
「引っ込みがつかなくてずいぶん意固地になってたけど、もう大丈夫なんじゃないかしら。稔もきっと、許すキッカケが欲しかったんだと思うから」

「……そうか」



菜乃花の言葉でひとまず自分が許されたことを察した俺は、安堵の吐息とともにうなずいた。

彼女はさらに満面の笑顔を見せると、パチンと気を取り直したように手のひらを合わせる。



「さて! 佑さんたち、このあとの予定は? せっかくだし、お夕飯も食べていって」



料理上手な義妹からの申し出は魅力的だが、首を横に振った。



「いや、慌ただしくて悪いんだがすぐに会社に戻る」

「そうなの? 残念ねぇ」



心から残念そうに話す菜乃花の背後で、また襖が開く。



「……本当に忙しないな。突然来たかと思えば、もう帰るのか」



話が聞こえていたらしい。スマホ片手に、稔が呆れたように言った。



「ちょうど、紅茶用茶畑の管理者から電話が来た。さっきの件、話は通しておいたぞ」

「そうか。助かる」



思ったままに口にすれば、稔は「まあ」とスマホを持つ手を首の後ろに回す。



「新しい販路の開拓はしようと思っていたところだったし。せいぜいうちの商品の良さをアピールしてくれ」



その憎まれ口が彼なりの激励だということは、俺はもちろんおそらく小糸にも伝わっている。

大きくうなずいたメガネの奥にある小糸の瞳は、やる気に満ちてキラキラと輝いていた。



「ああ。約束する」



キッパリと首肯した俺に、稔が少しだけ口もとを緩める。

そうして俺と小糸による波乱の原材料調達交渉は、結果的になんとか無事成功を収めたのだった。
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