バッドジンクス×シュガーラバー
ビジネスバッグと紙袋をまとめて持つ右手とは反対の腕を持ち上げ、久浦部長が手首にある時計を確認した。
不意に、その目がこちらを向く。通り過ぎる車の間から逸らす暇もなく視線が交わって、息を止めた。
1歩前に並んで立つ牧野さんとえみりさんは、私たちに気づいたらしい久浦部長へ向かって手を振っている。
信号が青へと変わった。周囲が動き出す中、私はすぐに動くことができない。
そのとき、だった。
「──危ないッ!!」
叫んだのは、久浦部長だけだったか、それとも他の誰かも一緒だったか。
横断歩道が青なんだから、車道側は赤信号のはず。
けれど他の誰よりも早く飛び出していた10歳くらいの少年に向かって突っ込んでくる1台の軽自動車が視界に入り、私はヒュッと息を呑んだ。
そこからはもう、目の前の光景がスローモーションのように見える。
驚きに固まった少年の1番近くにいた久浦部長が、ほとんど体当たりするように少年を突き飛ばした。
彼はアスファルトに転がったけれど、きっとかすり傷や打撲程度の怪我で済んだと思う。
だけど久浦部長は、そのまま軽自動車と接触して──……。
「……っ部長!!」
至近距離で聞こえた牧野さんの大声が、合図になった。目に映る景色が通常のスピードで動き出し、私の耳に音が戻る。
届くのは、悲鳴や混乱のどよめき。視線の先にあっという間に人だかりができて、牧野さんとえみりさん、そして私は、その中心に向かって駆け出していた。
不意に、その目がこちらを向く。通り過ぎる車の間から逸らす暇もなく視線が交わって、息を止めた。
1歩前に並んで立つ牧野さんとえみりさんは、私たちに気づいたらしい久浦部長へ向かって手を振っている。
信号が青へと変わった。周囲が動き出す中、私はすぐに動くことができない。
そのとき、だった。
「──危ないッ!!」
叫んだのは、久浦部長だけだったか、それとも他の誰かも一緒だったか。
横断歩道が青なんだから、車道側は赤信号のはず。
けれど他の誰よりも早く飛び出していた10歳くらいの少年に向かって突っ込んでくる1台の軽自動車が視界に入り、私はヒュッと息を呑んだ。
そこからはもう、目の前の光景がスローモーションのように見える。
驚きに固まった少年の1番近くにいた久浦部長が、ほとんど体当たりするように少年を突き飛ばした。
彼はアスファルトに転がったけれど、きっとかすり傷や打撲程度の怪我で済んだと思う。
だけど久浦部長は、そのまま軽自動車と接触して──……。
「……っ部長!!」
至近距離で聞こえた牧野さんの大声が、合図になった。目に映る景色が通常のスピードで動き出し、私の耳に音が戻る。
届くのは、悲鳴や混乱のどよめき。視線の先にあっという間に人だかりができて、牧野さんとえみりさん、そして私は、その中心に向かって駆け出していた。