バッドジンクス×シュガーラバー
そうして人波をかき分けた先で目にしたものに、呆然と立ち尽くす。



「ひ……さうら、部長……」



硬いアスファルトの上──赤い液体の中でうつ伏せに横たわる、大好きな人の姿。

震える両手で顔の下半分を覆いながら、それでも、驚愕に見開いた瞳を逸らすことはできない。



「浅村ッ救急車!! 何してんだ動け!!」



私と同じように立ちすくむえみりさんに怒号を飛ばし、牧野さんが久浦部長のもとへと駆け寄る。

ハッとしたようにえみりさんがバッグの中へ手を入れたと同時に、私も動き出していた。



「部長……っ久浦部長!! 聞こえますか!?」



身体の横にひざをついて呼びかける牧野さんの声が聞こえていないのか、白いシャツを真っ赤に染めた久浦部長は固く目を閉じたままだ。

その姿が、いつか見た血溜まりの中の父親と重なって──私は部長の頭側にペタリと座り込み、こんなときでも綺麗に整った逆さまの顔を信じられない思いで見下ろした。



「あ……部長、ああ……」



なんで。
どうして、久浦部長がこんな目に。

あなたは、強運なんでしょう? 良くないことなんて、跳ね返してしまうんでしょう?

見開いた瞳に、涙が浮かぶ。それはあっという間に決壊して、ボロボロとこぼれ落ちた。
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