バッドジンクス×シュガーラバー
「おい、痛いぞ牧野」

「なんか全然外傷らしいもの見当たらないと思ったら、ちゃんと華麗に躱してたんじゃないですか!! 部下の心臓止める気ですか!!」

「悪い。けど着地は失敗して転がったから、若干頭打って星が見えた」

「この程度で済んだならタンコブくらい甘んじて受け入れましょうね!」



目の前で繰り広げられるテンポのいいやり取りを、ポカンと眺めていた私。

そこにえみりさんもやって来て、深く息を吐き出した。



「一応救急車は呼んだけど……なんか、元気そうね」

「そ、う、ですね……」



返した直後、ポロッとまた、一度は止まっていた涙がこぼれ落ちる。

ここでようやく、久浦部長が無事だという実感が湧いて──抑えることもせず、今度は声に出して泣いた。



「よ、よかったあ……っ部長が無事で、ほんとに……っう、うあ~~」

「あらあらあら」



泣きじゃくる私の背中を、えみりさんが優しく撫でてくれる。

牧野さんは、周りで様子をうかがっていた人たちに「お騒がせしました」と声をかけていた。

そんな中、久浦部長がむくりと上半身を起こす。



「……小糸」



血まみれ……もとい、トマトジュースまみれのシャツで髪も乱れて、なんだかボロボロで。

だけど、生きてる。久浦部長は……無事で、生きてる。
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