バッドジンクス×シュガーラバー
「はいはい、おふたりさんそこまでにしましょー。続きはふたりきりのときに、ごゆっくり!」

「救急車が到着したみたいだから、ひとまずそっちとお話ししなきゃね」



どこかむず痒そうな顔をするのは牧野さんで、えみりさんはニコニコ笑顔だ。

落ちついて周囲に気を配れば、たしかにサイレンの音が近づいてくるのがわかる。

そして、今の今まで自分たちがしていたやり取りは、たくさんの人たちに見られていたということも。

今度は別の意味で、猛然と顔を熱くさせた。



「一応、病院で検査はしてもらった方がいいんじゃないですか? いくら不死身とはいえ」

「不死身なわけあるか。ヒトより少しばかり運がいいだけだ」



立ち上がった久浦部長に牧野さんがいつもの調子で軽口を叩き、呆れ顔を返されている。

同じく立ってはみたものの羞恥心のあまりうつむいていた私は、そういえば、と思って辺りを見渡した。

久浦部長と少年をはねかけた軽自動車は、なんとそのまま街路樹に突っ込んでしまっていたようだ。

けれどもひしゃげているのは助手席側のフロント部分で、運転手は無事だったらしい。たぶん、車の傍らで腰が抜けたように座り込んでいる高齢の女性がそうなのだろう。

そして肝心の少年は、母親らしき女性の腕の中でわんわん声を上げて泣いていた。あれだけ大きな声が出せるなら、こちらもたいした怪我はせずに済んだのだろうか。
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