バッドジンクス×シュガーラバー
そのまま部長は踵を返し、この部屋を出て行こうとした。

けれどもドアノブに手をかけたところで、何か思い出したようにこちらを振り向く。



「ああ、そうだ。そろそろ小糸にも、新商品の開発にいちから挑戦してもらうつもりだ。まずは今度のメニュー会議にかける案を、いくつか考えておけ」

「え……っは、はい!」



先ほどまで見せていたものとは違う、純粋に上司としての顔で出された指示を聞いた瞬間、反射的に姿勢を正し答えていた。

私の返事にひとつ満足げにうなずくと、久浦部長は今度こそミーティングルームをあとにする。



「はあ……」



残された私は、ドアが閉じた瞬間思わずため息を吐いた。

ひとまず……久浦部長が無事だったことは、本当によかった。

だけどなんだかいろいろと、言われたりされたりして……頭が混乱状態だ。

ペタリと両頬を包むように手のひらを当てると、明らかに熱を持っている。

たまらず再度深く吐き出した吐息も、やはりなんだか熱っぽい気がした。

本当に──久浦部長の強運には、私のジンクスも通用しないのだろうか。

今回だけじゃなく、この先も、ずっと?

ああは言っていたけど、部長の言葉は何の根拠もないはずだ。

なのにあれほど自信満々な態度で断言されてしまうと、なんだか不思議と説得力があるように思えて、自分でも戸惑っている。
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