バッドジンクス×シュガーラバー
「まあ、私にとっては、憂依のジンクスが本物であるかどうかはたいした問題じゃないです。ただ私は──憂依には笑顔で、平穏に過ごして欲しいと思ってるだけなので」



そこでまた、強い眼差しを俺に送る。



「……憂依を傷つけるようなことしたら、絶対許しませんから」



彼女は言うだけ言ってくるりと背を向けると、この場を去って行った。

同じタイミングで店内に戻るのもはばかれて、ため息をついた俺はそのまま横の壁に背を預ける。

……『本気』、か。俺が小糸に抱く感情は、もうそれほどの強さになっているのだろうか。

何にしろ、吉永さんの言うように、小糸を傷つけるような真似はできない。

優しく……大事に、したいと思う。



「……まあ、泣き顔も好みではあるんだが」



今の今まで対峙していた過激派美人が聞いたら、烈火のごとく怒り狂いそうだ。

不穏なつぶやきをつい漏らしつつ、俺はビルの隙間から覗く暗い夜空を見上げた。
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