基準値きみのキングダム
そんな近衛くんは店内をきょろきょろと見回して、怪訝に眉をひそめて。
それから、にやっと意地の悪い笑みを浮かべた。
「なるほどー」
「……?」
なるほど?
首を傾げると、近衛くんはさらに笑みを深くして。
「もう結婚したんだ。俺ら卒業したばっかなのに、早くない?」
「んなっ、何言……っ! 違うから!」
「顔、あっか。やっぱ図星なんじゃん?」
「違うってば! け…………っこん、とか、まだ、そんな……」
「声小さ」
くすくすと軽く笑った近衛くんは思いっきり動揺する私にもお構いなしに「だってさー」とマイペースに続ける。
「ここ、恭介んとこじゃん。なのに当たり前に杏奈ちゃんが出てくるから、嫁修行でもしてんのかなーって」
「っ、ごほっ」