売れ残りですが結婚してください
二人は天ざるうどんを注文した。

胡麻油の香り漂うサクサクの天ぷらと手打ちの十割蕎麦は2時間以上かけて来る価値のあるおいしさだった。

「春樹はああ見えて元々銀行マンだったんだよ」

「え?そうなんですか?」

「でもこの地方のそばを食べてすっかり蕎麦の虜になって挙句、そば職人になりたいといって会社を辞めてここで修行して店を持ったんだよ」

翠はシュウが春樹を羨ましそうに見ているように見えた。

「シュウは……どんな仕事をしてるんですか?」

「あれ?教えてなかったっけ?」

翠はシュウの言い方がなんだかわざとらしく感じ、違和感を覚える。

「知りません。ちなみにシュウのことほとんど知りません」

翠の聞く気満々の姿勢にシュウはタジタジになる。

「わかったよ。僕は普通のサラリーマンだよ。ちなみに今日は有給取ったんだ。三ヶ月前まで海外支店で働いていたんだよ。他に質問はある?」

「……いえ特には」

シュウがわざと隠していたわけではなかったことに翠はホッとした。


春樹の店を出た翠たちは車に乗った。

「この辺に小さな美術館があるんだけど……行ってみる?」

美術館という言葉に翠の目の色が変わる。

「行きます。行きたいです」

「わかった」
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