求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
体躯に合ったスーツを爽やかに着こなしているだけだ。

探るような眼差しを向けたからか、彼が居心地悪そうな面持ちになる。彼が両手に提げる紙袋は蓋がテープで止められているが、きっと仕事の資料だろう。

「上原課長。その荷物、ひとつ持ちますよ」

彼を気遣って歩み寄るも、なぜか後退りしながら断られる。

「だっ、大丈夫。女の子に重いものを持たせられないし」

「女の子って……、私のことそんな風に言うの上原課長くらいですよ」

ははっと笑い飛ばし、遠慮する彼の右手から紙袋を奪おうとする。が、持ち手をいくら引っ張っても彼が離そうとしない。

「本当、遠慮しないでいいですから」

「いや、でもっ……」

私が持ち手をグイッと引くと、彼も負けじと自身に寄せる。


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