求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
責めるじゃなく自嘲気味に笑いそうになった。

夏輝との交際期間は約一年。
それが長い方なのか短い方なのか、よく分からない。けれど私を深く知ろうとしてくれた。気づいていると思った。本当はそこまで強くないのだと……。


『そっか、分かった。別れよう』

すがることなんてしない。
私が静かに別れを受け入れたら夏輝はほっとした顔で『これまで、ありがとう』と小さく笑った。

それが彼を見た最後だ。

それこそ心が鋼で出来ていたらよかったのにと思う。でも、残念ながら私は生身の人間だ。

彼の前で泣かなかったのは強さじゃない。
泣いたところで何も変わらないと分かっていただけ。

年齢を重ねて嫌でも身につく、つまらないプライドが邪魔しただけ。

最新の恋はそんな風に終幕を迎えたのだった。

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