異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
メグミは、他の料理の指示を出しに行ったベルガモットのところへすぐさま持ってゆく。彼はまず形を見て、差し出されたフォークで一気に食べた。

「粒あんが利いているな。苺の酸味に良く合う。珍しい組み合わせだ」

「和洋折衷ですっ」

少々興奮しているのかもしれない。つい意気込んでしまった。

「ワヨウセッチュウ? メグミは時々理解し難い言葉を使うな。美しくてうまい。これの名は“抹茶パフェ”でいく」

「はい」

名前は大切だ。客人に苺を使っているこれは何だと訊かれても答えることができるし、今後内部でもこの名で統一することになる。

元の世界には、苺大福という和菓子もある。大福ならこしあんを使うが、パフェにするなら粒あんだろう。酸味と粒あんが絶妙にそれぞれ生きると思う。そこへ抹茶シロップだ。白玉がシロップでつるんとのど越し良く食べられるはず。

「このスピードならすぐに出してゆけるな」

「できているシロップで作って出して、その間に次をセットしていきます。でもそんなに数が必要でしょうか」

白玉粉や抹茶シロップなど、メグミはパフェというよりあんみつに近いものを意識していた。いまは手元に寒天がなく、地味だと感じた色合いの問題で中途になりそうだったのだ。けれど、苺があるならいける。

これで栗羊羹の場所へ置けば、穴が開いた感じにはならないはずだ。
< 195 / 271 >

この作品をシェア

pagetop