異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
返事も待たずに、ベルガモットは厨房を出て大広間へ向かった。

――繊細な細工? 練りきりのことかな。これって褒めてもらったと思うけど、あんな難しい顔で、上から睨むように言われると怒られているみたい。

ベルガモットは、もしかしたら怖い人というよりは無器用な人かもしれない。

「メグミ。何から始めるんだ?」

「あ、はい。あのね」

メグミはどういう順序で数を作ってゆくかを頭の中で手順を構成する。それを彼女の指示待ちになった五人に説明していった。

「粉を練って白玉を茹でます。最初だけやって見せるから覚えて。抹茶シロップは大量に作ると上手く溶けないから、溶け具合を見て砂糖と抹茶を合わせてゆきます。それも最初にやるから。その二つは冷まさなくちゃいけないの。ボウルを水桶に……」

二人でできそうなところは二人に、一人でしかできないところはその人に言う。残った人には苺を半分に切ってほしいとお願いした。

グラスが作業台の上に並べられる。メグミは白玉、クリーム、粒あんと載せてシロップを掛け、最後に苺を飾っていった。出来上がるとすぐに給仕が持ってゆく。

次のグラスが並べられて、彼女はそれにセットしてゆく。

急ぐと乱れがちになりそうなところだが、己を宥め集中力を切らさないようにする。集中は時間が過ぎるとさらに上がり、他の者が作っている白玉などに対しても、『きちんと冷まして』などの注意を飛ばせるほどになった。
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