異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
そうして、ポンと肩を叩かれて顔を上げると、五人のうち三人がダウンしていた。肩を叩いたのはベルガモットだ。

「終わった。客人は帰り始めたぞ」

彼を見上げたメグミは、呆けた顔をしていたようだ。

「苺を持ってきた隣国の王太子が大変喜んでいた。“あんこ”とはなんだと陛下に聞いていたぞ。目的が少しは達成できたな」

当然のように、ベルガモットはコンラートの狙いを汲み取っていた。

それでもティラミスをぶつけてきたのは、彼の後ろ立てのグレイ公爵の意志には逆らえなかったからだ。けれどそれなら、グレイ公爵はコンラートの邪魔をしたいのだろうか。それともメグミのことがひたすら目障りなだけだろうか。

――ジリン様と敵対しているんだったっけ?

どちらにしても、メグミとしては栗羊羹もパフェも多くの人に食してもらえたし、あんこも認知されたようで、嬉しい。それに尽きる夜会だった。
< 199 / 271 >

この作品をシェア

pagetop