異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「コラン様のお役に立てるなら嬉しいです」
コンラートはメグミをじっと見る。目を細めた感じがとても艶めかしくて、心臓がどきんっと鼓動を打った気がした。
「あの……」
「なぁ、メグ。お前には黒獣王に対する先入観がない。周りはいつも俺に怯えていて、なにかを決めても『はい』としか返してこないし、結果が出ても評価はしない。良かったとも悪かったとも言わないんだぞ。無反応は一番たちが悪いと思わないか?」
メグミは黙ってしまう。先入観がないのは他の世界から来たからであって、ヴェルム王国のことも黒獣王のことも知らなかったからだ。けれどいまは知っている。知っているうえで、コンラートのやっていることはすごいと思う。
「メグが、水路の事業や、大通りの整備を褒めてくれて、嬉しかったぞ。補助金のこともだ。苦労した結果を認められるというのは、すばらしく心が充足する。俺はメグと話して初めてそれを味わった。自分を肯定できるというのはいいものだな」
「そうですね。私も作った和菓子をうまいと言ってもらえると本当に満たされます」
コンラートは笑って彼女を見る。
「メグはいつも和菓子のことばかり考えているんだな。まぁいい。おまえのそういうところが好きなんだから」
――好き?
再びどきんっと心臓が跳ねる。
そこで『くしゃん』とくしゃみが出たのは、誓って言うがわざとではない。ドレスの首回りが開いているし、袖の先にレースがたっぷりあって広がっていたから冷気が入ったようだ。
コンラートはメグミをじっと見る。目を細めた感じがとても艶めかしくて、心臓がどきんっと鼓動を打った気がした。
「あの……」
「なぁ、メグ。お前には黒獣王に対する先入観がない。周りはいつも俺に怯えていて、なにかを決めても『はい』としか返してこないし、結果が出ても評価はしない。良かったとも悪かったとも言わないんだぞ。無反応は一番たちが悪いと思わないか?」
メグミは黙ってしまう。先入観がないのは他の世界から来たからであって、ヴェルム王国のことも黒獣王のことも知らなかったからだ。けれどいまは知っている。知っているうえで、コンラートのやっていることはすごいと思う。
「メグが、水路の事業や、大通りの整備を褒めてくれて、嬉しかったぞ。補助金のこともだ。苦労した結果を認められるというのは、すばらしく心が充足する。俺はメグと話して初めてそれを味わった。自分を肯定できるというのはいいものだな」
「そうですね。私も作った和菓子をうまいと言ってもらえると本当に満たされます」
コンラートは笑って彼女を見る。
「メグはいつも和菓子のことばかり考えているんだな。まぁいい。おまえのそういうところが好きなんだから」
――好き?
再びどきんっと心臓が跳ねる。
そこで『くしゃん』とくしゃみが出たのは、誓って言うがわざとではない。ドレスの首回りが開いているし、袖の先にレースがたっぷりあって広がっていたから冷気が入ったようだ。