消えないで、媚薬。
「はぁ!?何それ…」
「言わなきゃ俺、またこのままキスする勢いだけど…?」
「な、何言って…」
身体が前に来た。
顔が近付いて逃げられない状態。
無理やりにも程がある。
「もしかして香帆さん…キスしてほしいの?」
「……慶太、くん」
目合わせられない……
何でこんな至近距離で呼ばなきゃならないの?
息がかかりそうなほど近い。
これは意識するなと言う方が無理な話。
「その顔……誘ってんじゃん」
「ちがっ…」
慌てて否定しようと顔を上げたらもう奪われてた。
心臓が飛び跳ねる。
身体がうまく動かない。
後頭部まで疼いてとろけてしまいそうな勢い。
心がもう許してる……
「お願いだから他の人にそんな顔見せないで?俺以外、絶対だよ?」
どうしよう……
頭のどこかでダメだと分かっていながら身体は正直だ。
素直にコクリと頷いてしまう。
なんで………拒めないの………?
会うたびにキス………
これじゃ………これじゃ………
ダメなのに………
私の意思はどこに行ってしまうの?
触れてしまえば消えてなくなってる。
心も身体も許してる。
付き合ってるって事実だけで彼を高揚させてしまってる。
何ひとつ未来を見させてあげれてない。
このままズルズルと巻き込んで破滅させてしまうかも知れない。
「香帆さん……大好きだよ」
どうすれば別れられる……?
嫌われる……?
自然消滅は無理だと思う。
幼稚園に来られても周りに迷惑がかかるし。
いっそ「嫌い」だと言う……?
この瞳を見て言える……?
「香帆さん、何考えてる?」